中国というところでは、日本では考えられないようなことにも普通に出会える。
知り合いになった中国人の実家に招待された時のことだ。彼の実家は成都から2時間ほど高速バスで下った小さな街にある。小さな街といっても、地図にも載っているそこそこ賑わった街だ。
彼の実家はその街の目抜き通りの脇に立つ古いマンションの4階だった。マンションの階段を上ってゆくと、踊り場という踊り場に炭が積んである。
「今でも時々必要なんだよね」と彼は言った。
「ふうん」と僕は聞き流した。
↑これ
炭というと、日本人の感覚だとバーベキューか暖を取るものと相場が決まっている。もうすぐ冬だし、僕はてっきり冬は炭を使って暖を取るのだろうと勝手に想像してしまっていた。でも、違った。そのマンションには本来ガスの設備がなく、住民は炭を使って煮炊きしていたのだ。ちなみにガスの設備がないのはこのマンションだけではなくて、この町のマンションには基本的にガスの設備がなかったらしい。
もちろん今ではどこも天然ガスが使えるようになっている。とはいえ、ガスが来たのは2005年からというから、本当にごく最近まで炭での生活が続いていたのだ。さらに驚くべき事に、ガスといっても日本でいうところの配送方式のプロパンガスのようなものなので、時々タンクが空になってガスが出なくなる事がある。だから今でも炭が必要になる。階段に炭が積んであったのはそのせいだ。
そんなわけで、このマンションの各家庭には現役の窯があるのだ。
炭の生活というのは、かなりの技量を要するもののようだ。
朝、炭に火をつける。炭は火力が大きくなるのに時間がかかるので、火を大きくするのも技量のひとつだ。そうして朝の調理を終えたらとりあえず火力は必要なくなるけれど、しかし火種を消してしまうわけにはいかないので、火種を保ちつつ、炭の消費を抑えるために極力火を小さくする。これにも技量を要する。
日本のマンションでは火事を嫌ってオール電化なんていっているのに、中国では炭と窯で煮炊きするマンションが存在する。
こういう現実を目にする度に思う。
異文化コミュニケーションは、本気を出しても、たぶん追求しきれるもんじゃない。
これがその台所。右の方にガスコンロがあるけど、その下に窯が隠れている。ガスが止まったらコンロを脇にどけて下の窯を使う。ガスコンロの下の方に黒い丸い部分があるけど、そこが空気の調節口。大きく開くとたくさん空気が入って火力が大きくなり、閉じると酸素不足で火が消える。小さく開けて火を消さないように細く保つのがテクニック。2008年現在、こんな生活がまだ行われている現実には本当に驚かされる。

!人気ブログランキングに投票お願いします!
最近のコメント